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「シアター・ビートリッシュ」セルフインタビュー③

2014/11/22

2ndの続きです。

娘が家出して涙に暮れる母に向けて、からかうように"Cry Mama Cry~"と一平ちゃんが歌うシーンがありますが、これは先に出てきたCry Baby Cry(make your mother sighと続く)をもじっているのです。本当の歌詞は、「泣け泣け赤ちゃん、母ちゃんため息漏らすまで」なんですが、母ちゃんのほうが泣いているので、Cry "Mama" Cryというわけで。

ここからは母ジュリアの心理描写とともに、一平ちゃんのタップを魅せる曲が続きます。

Happiness is a warm gunは、ファンも多いジョンによる名曲、元祖?プログレ曲だと私は思っていますが、この弾き語りアレンジはこの企画以外のライブでも練習がてらに何度か演奏しましたが、非常に好評ですね。
プログレの曲をさらにプログレッシブにアレンジしています。これはぜひ聴いていただきたい。
一曲の中でくるくると展開があるので、一平ちゃんのパフォーマンスも、シアトリカルな要素を全面に出してもらいました。つまり、純粋にタップを踏む、というよりこういうシチュエーションのこういう演技で、という指定をしました。タップダンサー的には我慢させたかもしれませんね。

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Happiness is a warm gun(=幸福とは発射した後の温かい銃のことである)ですから、"銃"がキーワードなわけですが、つぎの曲がこれまたホワイト・アルバムからの選曲でYer Blues、歌詞はひたすら「死にたい気分だ!」と言っています。そこで悪魔の一平ちゃんがジュリアを唆すわけです、銃を握らせ何か耳元で囁く、ジュリアはまるで何者かにとりつかれているように、冒頭の歌詞である"yes, I'm lonely, I wanna die"と呟くのですが、なんとか抗い曲の演奏へと移ります。そう、"but if I ain't dead already, girl you know the reason why"、「でもまだ死んでないわけ、なんでかわかるだろ?」と言っていますからね、死なないで済んだわけです。

Yer Bluesは、タップがあって成り立つ音楽、音楽的にタップがしっかりと支える、という趣向でアレンジ、リハーサルをしました。他の曲もですが、一平ちゃんとコラボレーションを始めた2014年2月28日の企画リハーサルから数えて8ヶ月ほどかかってやっと、二人で音楽、というところまで辿りついたと思います。

タップ三曲目はOne After 909、ロカビリーですね。三曲目は、ノリのいい踊りやすい曲、リズムでもう惜しげもなくタップのテクニックを、魅力を魅せて欲しいと思い、選曲しました。ほかにも候補があったのですが、ロカビリー、ロックンロールは私も好きですし、本番もすごく楽しめて、この選曲で良かったですね。
タップ三曲とも、本番の一平ちゃんのパフォーマンスは素晴らしかったですね。あまり言いたくないのですが、私がリズム的につまづいてしまった箇所もあったのですが、しっかり聴いて合わせてくれて、気迫もひしひしと伝わってきて、リハーサルはもちろん、今までのどのライブとも空気が違いました。お客さんの興奮も伝わってきました。

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タップシーンが終わって、選手交代、プルーデンスが帰って来ます。
1stの"いちめんのははのな"のように、ここでもビートルズの楽曲ではない自作の詩、というか歌をひとつ、挿入しました。ただ、コラージュ的に、娘が母の名を呼び(Julia)、母が娘の名を呼ぶ(Dear Prudence)曲の一部を加えたり、歌詞で選んだDo You Want To Know The Secret?の冒頭を加えたり、いろいろ遊びました。

一度家出して戻ってきたプルーデンスには、明らかに変化がみられます。服装や髪型もですが、顔つきすら別人のよう。そして、母娘の関係ももちろん今までどおりではなく、とくに娘の方は相反する思いを抱えつつどうにか母娘が歩み寄ろうとする様子を、母娘の合唱で描きました。そこまで伝えられたかどうかはわかりませんが、宝栄さんは歌声も素敵で音感もすばらしいので、ぜひ一緒に歌ってみたい、ハモりたいという思いがまずありました。さすがに宝栄さんも舞台で歌わされるのはほぼ、初めて?だそうで緊張はしていたと思いますが、白ワンピース時代(2nd前半)の可愛らしい雰囲気からガラッと変わってこの憂いを含んだキリリとした表情、演技は凄いですね。

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自作の詩で、次のAssum Preto、くろつぐみ、へと誘導しています。言葉遊びですね。
Assum Pretoはビートルズの曲ではなく、ブラジル音楽、フォホー(ブラジル北東部のフォークソング)を代表する作曲家ルイズ・ゴンザーガの曲ですが、おなじ黒いツグミ、ということで、この曲とBlackbirdをメドレーにして演奏する、というアイデアはずっと前からあったのです。
実際には、ブラジルに生息するAssum(つぐみ)と、イギリスのBlackbirdは違う種類なのでしょうが…。
Assum Pretoの歌詞は「もっと美しく鳴くように 誰かがクロツグミの目をえぐった…」というすごく悲しい内容なのです。
Blackbirdも、パンフレットにも載せたとおり、「おちくぼんだ目でどうにか見ようとして/傷ついた翼でどうにか飛ぼうとして」と、なんらかの障害を抱えた境遇にあるわけですが、Assum Pretoが救いようもなく悲しい歌詞なのに対して、Blackbirdには励ましの言葉がかけられているので、真っ暗闇のAssum Pretoから、希望が見えるBlackbirdの流れが良いな、と。

Blackbirdは、黒人女性の人権運動が盛んだった頃にポール・マッカートニーによって書かれた、彼女たちに向けたメッセージソングであると言われています。暗闇から今こそ飛び立つ時だ、自由になるのだ、と。プルーデンスへのメッセージ、もしくはプルーデンスが自分自身を奮い立たせている様子を想定して、この曲をラストに宝栄さんにソロで踊ってもらいました。

Blackbirdのアレンジも、とても苦労しました。これも、2ndを作ろうと決めたわりとすぐ、今年の三月くらいにほぼ即興でこんな感じ、、というイメージを録音して、それがとても気に入ったのですが、ちゃんと構成を決めるまで苦労し、構成を決めても正確に弾けるようになるまでなかなか時間がかかり…、本番の演奏も実はかなり悔いが残っているのですが、編曲は本当によくできたと思っています。歌詞を聴きとるまでまったくBlackbirdだと気付かなかった、とお客さんに言われるくらい原曲から変えていますが、紛れもなくBlackbirdですよ。

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そして宝栄さんのダンス、本編ファイナルにふさわしい感動的なパフォーマンスでした。もちろん、本番中は見られないので確認したのは映像でなのですが、お客さんの多くが「泣いた!」と言ってくれていて、私自身、生で見られなかったのが悔しいくらいです。

ここで公演を終えてもよかったのですが、5拍子タップのI feel fine、Girl、あとメンバー紹介に使用したHoney Pieと続けてやりました。
思いがけずアンコールまで頂いて、最終的には押してしまった休憩時間も含めるとトータル二時間半にも及ぶ公演になってしまったので、お客さんは疲れただろうと・・・。再演では蛇足の三曲は、どれか、もしくはすべてカットするかもしれません。

Girlは、コード進行も変えて、フラメンコのイメージで編曲しました。宝栄さん、一平ちゃんがユニゾンで踊ったり、宝栄さんのパルマ(手拍子)で一平ちゃんがタップを踏んだり、宝栄さんのソロパートもあったり、と最後は派手に明るく終えたいというのは私の性格というか好みというか。こちらも蛇足ですが、Girlの歌詞冒頭は"Is there anybody going to listen to my story..."で、訳すと「俺の話を訊け~♪」だと思っているんです。(笑)歌謡曲っぽいでしょう?このアレンジにはなんちゃってフラメンコの歌謡曲、それもジュリーのイメージがあります。あと横山剣と。(笑)

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…というわけですが、喋りすぎましたかね。
ブラッシュアップされたアンコール公演@新世界(六本木)で皆様にお会いできることを楽しみにしております。

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all photo by BOZZO
by agatha2222 | 2014-11-23 03:18 | Project Beatlish | Trackback | Comments(0)


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